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パラレル・学生・サスナル
 
 
 
 容疑者N
 
 
 サスケは学校から出ると、ここ最近の日課のように自転車の後部にナルトを乗せ、家まで送った。
 そして今日はそのまま、ああだこうだと理由をつけてナルトの家に上がり込んだ。ナルトは自分の部屋なのに落ち着かない様子で、そんな様子のナルトにサスケはその瞳をしっかり見て「好きだ」と一言発した。
 
 ようするに、ナルトに告白をした。
 
 告白するタイミングはバッチリで、されたナルトは「え、あ、なに…」と、言葉をつまらし、顔をユデダコみたいに真っ赤にして、座っていた椅子から勢いよく立ち上がった。サスケは向かい側のナルトのベットに腰掛けていたのだが、そこからでもナルトの顔が赤いのを充分に確認できた。
 
 と、そこまでは確かに順調だったのだ。
 
 サスケはナルトに嫌悪の視線を向けられなかっただけでなく、明らかにサスケの告白に照れたと見えるナルトの反応はカナリ良かった。
 もちろん、サスケは勝算も何もなく告白したわけではない。しっかり段取りをし、今日のこの日までに惜しみない努力を続けて、ここまでこぎつけたのだ。
 
 後はナルトの気持ちを吐かせるだけ。それで両思いになってハッピーエンドになる、ハズだった。
 
 
 けれど、現在ナルトはサスケに答えを返さずに、自分の家の台所に向かっていた。その行動にサスケは少し嫌なものを感じる。不安だ。
 
 誰かがこんな話しをしていたのをふと、思い出す。
 
 『警察が容疑者を捕まえるでしょ?』
 
 ナルトの足は落ち着きなく冷蔵庫の前で止まった。
 扉を開ける鈍い音がする。
 
 『その時に容疑者は必ずと言っていいほどある事を言う』
 
 ナルトが冷蔵庫から牛乳を取り出した。ガラスの入れ物の表面は白く曇っていて、飲み物はよく冷えているようだ。
 
 なんで今こんな話を思い出すんだろうか。とりあえず思考の進むままに話しの続きを思い出してみる。容疑者は…
 
 『容疑者は必ず飲み物が欲しいって言うんだって』
 
 ナルトがカシャンとコップを出した音が響いた。次いで、牛乳の出るリズムの良い音が響く。
 
 『けどその時にね、決して飲み物を与えちゃだめなんだよねー』
 
 ふざけた言い回しに、この話しは担任のはたけカカシがしていたことを思い出す。
 そこまでの話しで、なぜ自分がこの話を思い出したのか、サスケは気付くべきだった。
 
 『なぜかって言うとね、飲み物を与えると、それまで容疑者が吐きだしそうだったことをね……』
 
 
 
 『飲み物と一緒に全部腹に流しちゃって、口を割らなくなるからなんだよ』
 カカシが残念でしたーと、舌を出したのを見た気がする。
 
 「ナル…!!!」
 
 ごく、ごく、こくん。
 
 
 真っ青になったサスケが叫んだのと、ナルトが無情にも牛乳を飲み終えたのは、ほぼ同時だった。ナルトがコップから口を離し目を開いた時、その表情が全てを物語っていた。
 
 
 「サスケ?どうしたってば??」
 
 
 コイツ…飲み込みやがった。
 
 
 落ち着いた声色からは、もはや告白に答えそうな雰囲気はない。寧ろどうやってもサスケのした告白をなかったことにしようと決意したように、ナルトの碧い瞳に力がこもっていた。
 
 
 
 
 容疑者は逃げた。
 自分は最後の最後で詰めが甘かった。
 
 
 
 
 サスケは頭痛のするこめかみを押さえ、当分ナルトが自分の気持ちをしゃべらないことを悟ったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
06/09/1406/11/06 修正
 漫画で考えていた学園パラレルの番外編。ナルトは自分の気持ちが恥ずかしくて中々口を割ろうとしない、というお話。
 サスケの恋はいつ報われるのか。二人の攻防はしばらく続きそうです。
 がんばれサスケ!!
 
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