星 屑 なら


道は靄がかかったように不明瞭だった。

変わっていないと思っていた道も少しずつ変わってたみたいで、自分のいる世界の里と、このサスケの里の小さな差が微妙な違和感を生む。
その微妙な違和感は足を一歩踏み出す度に増していく。靄はそれを誤魔化すように濃くなるが、ナルトはそれに構わず霞同様濃くなる違和感を受け入れていった。
赤い、禍々しいチャクラが薄く身を包むのを感じる。
後ろを振り返る。
いつの間にか辺りは闇に包まれ、子どもの大きな瞳だけが星くずを散らしたように輝いていた。
真摯な光だった。

「オレさ、そろそろ帰るわ」
「…そうか」
「世話になったてばよ」
「まったくな」
「かーーっ!本当におまえって可愛くねぇってば!」

ナルトは地団駄を踏んでイーっと歯をむいた。
そんなナルトに、5歳は下であろうサスケは面食らったあと、喉をクッと鳴らし、しょうがねーヤツといった表情で笑った。
それは、あまりにも懐かしい。修行のちょっとした合間や7班で共に生活した中で垣間見えた、サスケの優しい本質のような笑顔だった。

くそ、オレよりちっさいくせになめやがって……!

悪態を吐いてみても顔の熱が収まらない。
また、そんなサスケの顔が見れるなんて、見れたことが、こんなにも嬉しいなんて!
自然と緩む表情のまま、まるで最初から用意されていたように、ナルトは綺麗にじゃあなと言った。
小さなサスケはすぐに元来た道を向いてしまい、横顔のまま視線だけこっちに寄越して一言ああ、とだけ言った。
素っ気ない一言。だけど、自分たちの間に洒落た関係など求めてはいないので、飾らない彼の返事はナルトにとって、充分満たされる言葉だった。
視線の強さや、赤みがかった肌が、自分と同じなら尚更。

「ぜってぇ、お前を連れ戻す」

最後に小声で小さな背中に誓った。
どうぞそれまでは……

「元気で」

その言葉に子どもが振り返った、気がした。






10/09/06