焼 け


あーー……?

「やべっ」

夕日がキラキラと窓から差し込む中、その赤みで紫色に染まった瞳を大きく見開きナルトは固まっていた。
頭上からすやすやと子どもの寝息がする。
実はそれはつい先ほどまで呻き声だった。ナルトはその声で目が覚め、起き上がろうとしたら頭を掴む手に阻まれ、そこで現状を知った。
どうやら、自分は大泣きしたまま泣き疲れて眠ってしまったらしい。しかも、あろうことかこの小さなサスケに縋りついて。
確か椅子に座ったまま縋りついたはずなので、寝て増した重さに耐えかねたサスケが床に下ろしてくれたのだろう。そのまま力尽きたのか本人も一緒になって寝てしまったみたいだが。
悪いことをしたな、という思いと、あんな姿をよりにもよってサスケに…!という思いで少し目眩がする。
が、それよりもこの体勢をさっさとどうにかしなくては。
自分の重さに唸っていたサスケに体重をかけないようサスケから身体を浮かしたはいいが、四つん這いの状態で頭を子どもの胸の辺りで固定されているので、かなり無様な格好だ。そして結構きつい。
尻が頭より上の位置になってしまうため頭に血がのぼるし、腕を伸ばして張ることが出来ないので普段使わない筋肉がピクピクとひきつる。
だったらサスケを起こしたらいいのだろうが、漸く重圧から解放されて気持ちよさげに寝ている子どもを起こすなんて……
何より、ナルトがこの状況をもう少し続けたいと思ってしまっていた。
触れている頬に緩やかな鼓動と程よい温もりを感じる。

「あったけぇってば……」

『――それは、いけないよ』

「……ちぇっ」

わかってるってばよ、先生。

夢の中の上司の言葉が蘇ってナルトは子どもっぽくむくれてみる。次いで、静かに自嘲のような笑みを零した。

アイツは、本当はオレにこんなことしねぇもんな。

頭にのる小さな温度がナルトの胸を締め付ける。
けれど、涙はもう出なかった。




――――ナルト!

声がする。そろそろもどらなくちゃ。
大切な人たちが待ってくれているあの世界へ。








09/11/10