がり


つい頭を撫でてしまったのは、余りにもアイツに似た年上の男がこんな子どもの前で赤子のように泣きだしたからだ。

アイツは泣かない。でも、泣いたらこんなだろうか?

わんわん声を出して泣く姿は、年上の男なのにサスケの目には滑稽と映らず、ただひたすら切ない気持ちにさせられた。
なにかしてやりたい、その想いだけがサスケの心を占め、そう強く思うたび、ふわふわ柔らかい金髪を撫でる手は優しくなり、まるでそれに呼応するように泣き声は大きくなった。
テーブルの上のラーメンはもう薄らとしか湯気を立てておらず、麺の状態は確かめずとも悲惨だと想像がつく。これではもう食べられないだろう。食べ物を粗末にしたくはないけれども、この状況で食事を勧める気にはなれない。
だったら一層このまま布団の中に押し込んでしまおうか、そう思ってベッドに促そうと震える肩に手をかけたのがいけなかったのか。

「……っ!?」

ぎゅうぎゅうと自分より長い腕が胴体に絡みつき、座っている男の脚の間に引きずり込まれる。あっと言う間にサスケは身動きが取れなくなってしまった。
うぇ、とかひっくという嗚咽が胸元から聞こえる。一枚しか身につけていないTシャツに熱いしずくがじんわりと滲みて、広がる端から冷えていく。後から後から滲み込んでくる場所はいつまでたっても熱いままで、その冷たさと熱さの対比が胸を焦がした。
このまま泣きつかれて眠ってしまっては大変だと、常識では自分より何歳か年上の男に有り得ないだろうことを思うが、なんせ目の前の男は人がびっくりするようなことばかり仕出かすアイツにそっくりなのだ。可能性は否定できない。
そうなっては体格差からいって、とても面倒なことになってしまう。
それでも。
なぜか、動く気になれなかった。



とうとう本当に腕の重みが増すまでその頭を撫で続けたサスケは、金の旋毛をぼーっと眺めた。
キラキラと光を弾いて騒がしい。
日はまだ高い。
だけど、なにもする気が起きなかった。







09/10/01