落、


唐突に肌が熱くなった。喉が焼けたように呼吸が困難になり、意識が遠くなる。
薄く纏っていた赤いチャクラが身体から湧き出し、包みこまれる。
血のようにあかい、九尾のチャクラ。

力を貸せよ化けギツネ。
アイツを取り戻せる力を……!

意識が赤いうねりに巻き込まれる。
耳鳴りのような音。
冷たい水のような、熱いマグマのようなものに包まれ、やがて――



***

「はぁっはぁっ」

分厚い水の膜を抜けたように、いきなり自分の呼吸の音が鮮明になった。

『私が……してあげられるのは…………』
『出来ることの…………じゃないよ……』

「はぁっはぁっ」

――な、に?
荒い息、自分の激しく脈打つ鼓動の音、ピリピリと皮膚が弾けたような痛み。全て、鮮明になった。まるで消えていたテレビのスイッチが押されたように、身体の様々な情報が脳に流れ込んでくる。
けれども、まだ外界の音は遠い。

『君は、ホントは……』

優しい声がする。
温かい、空気。
しってる、これは。

「サ……サクラちゃん……」

空気が揺れる。温かい。

「痛っ……イテテ……」
「……ナルト……」
「……アレ?オレ、どうしたんだっけ……?アレ?」

なにしてたんだっけオレ?んん?おかしいってば、なんかデジャヴ……。

不安になって声のした方を見ると、目の淵に透明な液体が溜まった彼女がいた。

「アレ?サクラちゃん何で泣いてるんだってばよ?」

瞬時に新しく入った毒舌のメンバーの顔が脳裏に浮かぶ。
思わず思ったことを叫べば、一言多いとお腹に重たい拳を一発埋められてしまったのは予定調和と言えよう。

いってェ!うう、けどやっぱサクラちゃんはこうじゃねーと!

なんだかナルトは少しほっとした。





サクラちゃんがいる。今はそばに居ないけど、カカシ先生だっている。
オレを認めてくれた大切な人たちが、木の葉にはいる。
変わらねぇ。オレのかえる場所はここなんだ。
どこに行っても、どんなことになっても、同じ空の下、仲間がいる場所がオレのかえるところ。

なぁ、サスケ。お前もそうなんじゃねぇの?
オレはお前に追いついて、ぜってーお前を木の葉に連れて帰ってやるからな!



お前のかえる場所は、闇なんかじゃねぇよ。
お前のかえる場所は――






11/10/10