何度も何度も現実と夢想の世界を行き来しながら自分とは違う温度の熱で貫かれた。
思考することなんて、自分には見知らぬ寝台で目覚めた時からすでに奪われていた。けれどあの男には自分が目覚めるまで、否、それ以前から考える時間があったはずで。
だからこの暴挙にでた理由をサスケは持っているのだろう。
理由など持たれたところでサスケが里に帰ってこないなら自分にはどうでもいい話だ、とナルトが思ってしまうところがこの二人の噛み合わない所以の一つか。




『ブラックアウト』


衣服はすでに身を覆う機能を果たさず、ぬかるんだ肌に纏わりついて気持ちが悪いことこの上ない。
荒い呼吸はもはやどちらのものかわからないが、引きつった甘い声が自分のものだという認めたくない事実だけはかろうじで認識している。
ご丁寧にサスケは長い時間と手間をかけて、意識がとばないようまるで検分するかのようにナルトの身体を慣らしていった。
深くなり目眩さえ連れてきた鉄の味のするキスでナルトが意識をとばしている間に、両手を頭上で拘束し、身体を両脚の間にねじ込んで足を閉じれないようにした。
なすがままになるしかなくなったナルトがせめて瞳だけでサスケを牽制すると、その表情をじっくりと見ながら胸の突起の周りの柔らかい部分や腹を撫でられる。初めこそ恥辱に眉をひそめて赤い顔していたナルトだが、繰り返される執拗な愛撫に次第に切なげな吐息が漏れ出した。

「サ、スケ。おまえ、なにした、いんだってば?」

火照った身体はどこにそんな感知機能を内在させていたのかと思うほど敏感で、直接的な刺激をくれないサスケの手に焦れていた。

「おまえは何をしてほしい?」

ナルトの問いに答えず逆に問いかけてきた男は、その後も執拗に舌や指を駆使し、ナルト自身触れたことのない場所を必要以上に解して押し入ってきた。
入る前に入れるぞ、と意地悪く耳元で囁くことも忘れずに。
繋がった瞬間の痛みなどはとうにとろけきった頭や身体には一瞬のことのようで、生理的嫌悪は浸食されきった身体にはあってないようなものだった。
ここまできたら抵抗する意味も気力も見いだせず、ナルトはさっきからとびそうになる意識をどうにかつなぎ止めている。
気を抜けば自己の舌を噛みきりたくなる自我をどうにか抑え、さらに意識をとばすという誘惑をもかわして踏んじ張っている自分をこの男はわかっているのだろうか。その理由が、目の前の男が自分の前から消えないように少しでも留めることに起因しているなんて馬鹿げたことを。
呼吸を少しでも整えられればと揺れに合わせてナルトは溜まった唾液を嚥下した。すると下腹部に微妙に力が入り、まるでサスケのものを自ら進んで緩く締め付けたように錯覚してしまう。サスケもその微妙な締め付けに劣情が煽られたのか、律動が激しくなり、角度を変えながら散々挿入する前から弄っていた前立腺を更に攻め立てた。

「う、あッ…んん!も…や…オレ、むり……」

何度目になるかわからない泣き言を口にするが、そのたびに口が塞がれ更なる快楽を引きずり出すようにサスケの指が動く。
いったいこんなことを何時間続けたのか、腰も内股も痛くてもう力が入らない。
なんでオレこんなことしちゃってんの?

「まだイけるだろ?」

荒い息を一息ついたサスケが上から見下ろしてくる。
眼光は相変わらず突き刺さるように鋭いのに、初めてみる熱に浮かされたような濡れた漆黒は、絡みつくような欲を滲み出していた。それはまるで催淫効果を含んでいるかのようにナルトの芯を震えさす。
意識が朦朧とする中、腹の上に溜まった粘液をひきのばすサスケの指だけが存在を主張し、身体が嫌でも反応を返す。
初めは無理矢理だったとしても、今、ナルトは確かに興奮していたし、サスケに欲情すらしていた。
それでも誰かが心の中で叫ぶのだ。それは過去の自分たちを裏切っていないか、と。

「足りないみたい、だなっ」
「んあぁッ……!」

急な抉るような腰使いに背中がつるのではと思うほど仰け反る。
快楽、熱、欲、圧迫感、吐き気、浸食。
全てが所狭しと体内を駆け巡る中、その奥に潜むのは焦燥感と絶望と。一握りの確かななにか。
卑猥な音と断続的に漏れでる自分の声の間隔がどんどん短くなって、絶頂とともにナルトの世界は一瞬にして抗う間もなく暗闇にのまれていった。




ブラックアウト。
ただ、物語はここで終わったわけでもここから始まるわけでもない。




07/11/16
鬼畜サスケシリーズ2