嘘か真か 2 前の階段をのぼっていくのは普段思っていた以上に広い背中の男。下のアングルから見ているのだからそう感じるのはまぁ、仕方がない。 こいつ何考えてるんだってば。 階段を上がる小刻みのよい音とは反対に、ナルトは悶々としながらサスケの後をついていく。 相手の考えがわからないからかける言葉さえ思いつかない。 漸く自分の部屋のある三階にたどり着いた時には、ナルトは息詰まりで呼吸困難に陥りそうになっていた。 「うち、来るだろ?」 急にサスケが振り返ってそんなことを言うものだから、呼吸はさらに苦しくなる。 サスケが何を考えているのかわからない。 そればかりが頭の中を駆け巡り、ナルトは促されるままにサスケについてドアをくぐる。 サスケの家は自分の隣なので、何度も来たことがあった。 いつ来ても無駄のない部屋だってばよ。 サスケの部屋はいたってシンプルでシックな部屋だ。ナルトはリビングにあるソファーに腰をおろしながら目で視界に映るサスケを追う。 キッチンで飲み物を用意するサスケはいつもと変わらない。 くそ〜。オレが先に根を上げんのを待ってんのか? そう思って気を張り詰めるのだが、サスケのあまりにもいつもと変わらない行動に、ついにナルトは色々考えることを放棄した。 人間一度放棄すると後はもうどうでもよくなるもので、ナルトはいつも通り部屋の端にあるソファーに寝そべる。 このサスケの家にあるソファーは、二人座るには少しだけ狭く、一人で座るには広すぎるぐらいの大きさだった。前には机も何もなく、フローリングが広がるだけなので、サスケは持ってきたお茶をナルトの目の前に差し出す。 「さんきゅ」 そう返してコップに口をつけると、床に映る影が目に入った。あれ、と思って首を斜めに傾げたまま視線を上げると、普段なら自分がここを陣取ると仕方なしに床に座っていたサスケがまだ立っている。 「なに?」 「なに、じゃねぇだろ」 ナルトの視線を呆れた顔で流しながら、サスケは寝そべっているナルトの足元を指差す。 「横寄れ、座れねぇだろ」 いつもならこんなことを言わないサスケが一体どういった風の吹きまわしだろう、とナルトは考えたが、それも一瞬のことだった。すっかりサスケと今日会った時に話した内容が頭から抜けていたのだ。その内容を覚えていたら、サスケの意図にすぐに気付けたかもしれない。 なんだよ狭いのに、と内心思って口を尖らせるが、一応人の家なので素直に横にずれる。 すると、とたんにその空いた場所が自分とは違う温度で埋められて、思わず鼓動が跳ねた。 サスケの体温は、思っていた以上に高く、自分とは違うその温度に酷くサスケの存在を意識してしまう。 ナルトは小さく唸りながら意識の中から隣にいる存在を必死で追い出そうとした。が、うまくいかない。目までぎゅ〜っとつぶって身体に力を入れる。 気にするな!隣にいるのは猫かなんかだってばよ。 くそ〜サスケが普段くっついてこないのに変にくっつくからこんなことに……って、だから隣にいるのは猫なんだって!! 「あの…さ、なんで隣に座るの?」 結局気付けば堪え性のないナルトはそうサスケに聞いていた。 「なんでって恋人だからだろ」 サスケがさらりと返した言葉に我にかえる。そうだ。そんなことになっていた。 「そ、そうだってばね」 ははは、とナルトはぎくしゃくと返事をして、ふと思う。 そっか、恋人になったらサスケはこんなに近いんだ……女の子と、こんなことすんのか…… なぜかつきり、と痛んで妙にざわついた胸に、ナルトは知らずに拳を握り締めていた。 07/06/25 エイプリルフール話2。 サスケはナルトが思っているほど常識がない、というより常識を飛び越えても平気な人間であるというね。うちのサスケは相手の冗談を平気で自分の目的達成のために利用します! けど一途ゆえだから許してやって!(マテ) あとちょっと続きます。 |